安倍政権が作り出した「閉塞感」を乗り越えるために
~適菜収と清水忠史が語る~
何を問題提起して、何を語りかけて、どうしたい
清水 本来なら安倍総理はその場で反論するべきでした。ロシアのいいなりになって四島どころか二島返還で決着とされてしまいます。戦後ヤルタ秘密協定やサンフランシスコ講和条約などの不公正なやり方で千島列島が奪われたのだと国際的に通用する主張を堂々と展開するべきでした。
適菜 沖縄県沖で米軍嘉手納基地所属のF15戦闘機が墜落した件に関し、安倍は国会で「飛行中止を申し出た」と言いましたが、これも真っ赤な嘘でした。外交の場で安倍が嘘をつくたびに、日本の立場が危うくなっていく。こうした「ホラ吹き」をトランプやプーチンがどのように観察しているかを考えたほうがいい。後は食いものにされるだけでしょう。こういう恥を知らない国は滅びるしかないんですよ。これで安倍が改憲したら、日本はお終いだし、ザマアミロですよ。日本はそれだけの国だったという話。何度も言いますが、これは本質的な批判をしてこなかった左翼の責任でもあります。「九条を守れ!」「戦争反対!」だけではだめなんです。
清水 それはそうです。でも、ニヒリズムに陥らずに生きていかなければならない。
適菜 価値の底が抜けてしまうのは、近代の構造上、必然です。そこから発生するニヒリズムをニーチェは、二つに分けました。能動的ニヒリズムと消極的ニヒリズムです。能動的ニヒリズムとは、ニヒリズムが必然であるとするならば、別の価値を見つけてきてごまかすのではなく、その根幹まで突き詰めて考えるということです。タチが悪いのは中途半端なニヒリストですね。自称保守論壇でありがちな、安っぽい復古主義だったり。価値を偽造するわけです。しかし、そんなことをしてもなんの意味もないとニーチェは言いました。近代が一方通行のシステムであるとするならば、ニヒリズムの試練に耐え、そこを突き抜けたところに、克服の道を見出さなけらばならないと。日本は敗戦国である以上、今のようなやり方は、仕方がないという議論があります。先ほど清水さんがおっしゃったように、イタリアもドイツも敗戦国ですが、日本とは違った道を歩みました。日本は対米従属と経済成長のセットを受け入れたわけです。だから、戦争に負けて民主主義になってよかったという人たちが今の体制を維持している。日本共産党はもともと自主独立路線でしょう。自民党の党是も自主独立憲法の制定だった。安倍は歴史を知らないから自民党は「改憲」をずっと唱えていたとバカなことを言っていましたが。
清水 対米従属の下で財界が利益を出すという、絶妙なコンビネーションが働いてきた。イタリアやドイツは、戦争犯罪や戦争責任について徹底的に明らかにしました。しかし、アメリカはA級戦犯容疑者の岸信介(一八九六〜一九八七年)、安倍の祖父を恩赦で逃して、アメリカの支配構造に協力する人物として利用するわけです。
適菜 そもそも自民党がそういう政党です。米中央情報局(CIA)は自民党にカネを流し続けていた。左派勢力の穏健派にも秘密資金が渡っている。これはアメリカ政府が公式に認めています。
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KEYWORDS:
『日本共産党 政権奪取の条件』
適菜 収、清水 忠史
日本共産党とは相いれない部分も多い。
私は、共産主義も新自由主義と同様、近代が生み出した病の一環であると考えているからだ。
日本共産党が政権を取る日は来るのか?
本書で述べるようにいくつかの条件をクリアしない限り、国民の信頼を集めるのは難しいと思う。
そこで、私の失礼な質問にも、やさしく、面白く、かつ的確に応えてくれる
衆議院議員で日本共産党大阪府委員会副委員長の清水忠史さんと
わが国の現状とその打開策について語った。
――――保守主義者・作家 適菜 収
作家・適菜収氏との対談は刺激的であった。
保守的な論壇人としてのイメージが強く、共産主義に対して辛辣な意見を包み隠さず発信してきた方だけに、本当に対談が成り立つのだろうか、ともすればお互いの主張のみをぶつけ合うだけのすれ違いの議論に終始してしまうのではないかと身構えたのだが、それは杞憂に終わった。
――――共産主義者・衆議院議員 清水忠史